治療計画、補綴修復、歯周病(インプラント)、歯内療法のスタディグループはデンタルスクウェアジャパン(DSJ)へ

症例紹介

症例紹介

治療計画・天然歯に対する補綴修復コース

~「科学的根拠が重要な理由を考えさせられたケース」~

DSJボードメンバーの土屋嘉都彦です。このケースは、73歳女性で「笑えないのでなんとかして欲しい」という審美障害を主訴に来院されました。狭心症の既往があり(2年前)、膠原病、ビスフォスフォネートの服用、口腔乾燥症など多くの問題を抱えており、初診時よりインプラント治療などの外科侵襲は最小限にして欲しいとの要望がありました。また、治療に掛けられる予算も限られていました。その為、患者さまに可撤性義歯、固定性義歯など種々の治療法を説明しました。残存歯の状態も良好とは言えず、予後不良の歯牙を保存するリスクを説明した後、保存できる歯牙は最大限保存し、なるべく可撤性義歯を避ける方向で治療計画を立案し治療を進めました。インプラント治療については同意が得られませんでした。

理想的な治療計画とは言えないものの、患者さまの主訴である審美障害は改善でき、また可撤性義歯の使用も避けられました。このケースは、咬合再構築、歯周治療、更に歯周外科を行なっていますが、ひとつひとつの術式に特記すべきものはなく、基本に忠実に処置を行っただけのケースです。予後はPoorとしか言えませんが、術後2年間、咬合時の多少の違和感を訴えているものの大きな問題はなく経過しています。患者の咬合習癖、また口腔乾燥症などのカリエスリスク増悪因子を考えると、定期管理がこれからの補綴装置、残存歯の寿命に大きく左右すると思われます。

このケースで重要なのが、「患者さまの要望」と「治療の科学的根拠」のすり合わせです。このケースに限らず、術者の「科学的根拠に基づいた治療計画」に患者さまが必ずしも賛同してくれるとは限りません。その場合、「科学的根拠に基づいた術前の説明」が重要になります。このケースは恐らくこの先10年、良好な状態で経過することは難しいと思われますが、その時には、可撤性義歯または可能であればインプラント治療が必要なこと、また追加の費用が掛かることを説明しており、患者さまもそのことを理解しています。

このように「科学的根拠に基づく」ことの利益は、施術した治療の予知性を高めるだけでなく、患者さまとの信頼関係を構築するための説得力ある「治療計画の説明」にも非常に有効だと考えられます。

DSJボードメンバー:土屋嘉都彦

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