私は、高校時代は比較的真面目な学生で受験勉強と部活に明け暮れました。高校総体が終わってからは歯科医師である父の影響もあり九州大学歯学部に入学しましたが、ハードな受験勉強の甲斐があって1995年九州大学の入学式で総代を勤めさせていただきました。
学生生活の多くの時間をテニス部活動、アルバイトに費やしました。代わりに歯科学以外の世界を多く経験することができ、他業種の多くの友人に恵まれたなと思います。思えば、当時の「歯科界の常識」に染まらなかったことが今の私の歯科医師としての哲学に大きく影響を与えていると思います。大学5年生の時に初めてアメリカ合衆国ワシントン州シアトル市にあるワシントン大学を訪問する機会を得て、歯科先進国といわれるアメリカの歯科教育の充実さに感動し、将来の留学に想いを馳せたものでした。
麻酔科研修で全身麻酔を行なっている様子
卒業後は全身管理と基本的な外科的知識や技術を習得するために、佐賀医科大学歯科口腔外科で3年半研修を積ませていただきました。医科のドクターと一緒に3ヶ月の救命救急、6ヶ月の麻酔科研修を行ったことは全身疾患にも細かい配慮をする歯科医師でなければならないという、考えをより強固にする機会となったと思います。
チュニジア口唇口蓋裂患者の資料採得
の様子
佐賀医科大学口腔外科で研修中には、発展途上国への口唇口蓋裂に関する知識・技術を伝えるための海外ボランティア活動に携わりスリランカ、チュニジアでの活動に従事しました。これらの経験を通じて国際的に物事を考える楽しさや、英語の重要性を再認識しました。
故 矢澤一浩先生と
タフツ大学歯学部歯周病科の専門医課程に合格するまでの1年半、東京日本橋でご開業されていた矢澤一浩先生(故人)に師事し、臨床医としての心構えを教わりました。顎咬合学会理事長を歴任され、アメリカの補綴教育を初めて日本に持ち込まれた保母先生と共に黎明期の日本の歯科医療を支えられたお一人で、人間的にも歯科医師的にも最も尊敬する偉大な臨床家です。
船越栄次先生と
二階堂雅彦先生と
タフツ大学歯学部卒で日本の歯周病学のパイオニア的存在の船越栄次先生、前臨床歯周病学会理事長の二階堂先生にタフツ大学入学のための推薦状 (letter of recommendation)をいただき、入学への大きなきっかけを頂きました。今でも多くのことを教わる偉大な恩師です。
2006年6月タフツ大学留学時初日のクラスメートとの写真。タフツ大学自体が非常に国際志向の大学で海外からの留学生を多く受け入れています。クラスメートは私を含め8人いましたが、そのうちアメリカ出身は3名で、他の5名はヨーロッパ、中東アラブ、南米、アジアとそれぞれ異なる地域の出身でした。異なる教育背景を持つ歯科医師が、世界共通言語の科学的エビデンスを通じて3年間の教育課程を通じて歯周病学インプラント学の専門医を目指します。
症例発表を行なっている様子
毎日、毎朝8時から授業が始まります。他科との治療計画セミナー、論文抄読、ケースプレゼンテーションが組まれていて、深く広く知識を習得することを求められます。積極的なディスカッションが中心で、先生が一方的に教えるスクール形式は多くありません。
歯周病専門医は基本的にGPの先生や他科の先生からの紹介を元に、相互連携を測りながら歯周治療、インプラント治療を行なっていきます。したがって専門医レジデントの頃から他の分野の専門医(GP、補綴、矯正、エンド、口腔外科)とコミュニケーションをとることが日常的に訓練されます。デンタルスクウェアージャパンのボードメンバーは全員同様の経験を有しています。
文抄読、治療計画セミナー、症例検討を通じて得たScience(科学的情報)を元に、それを技術に生かして実際の患者さんの治療にあたります。外科治療中はステップステップでファカルティーと呼ばれる指導教官に導きを受けながら治療を完遂していきます。タフツ大学は特にボストン中心部に近いことから患者さんが多く来院される病院ですので、量質ともに充実した多様な臨床経験(Art)を積むことができました。歯科医療の本質をよくScience and Artと表現されますが、3年間のカリキュラムでそれを体現していくことを学ぶわけです。本当にこのプログラムに入学してよかったと心から思います。
矯正科レジデントと連携を行なっている様子
ファカルティーに指導を受けている様子
患者さんに説明している様子
Yankee Dental Congress 2009
講演発表前の様子
プログラム在籍時は希望すれば対外的な学会講演会での発表機会も与えられます。アメリカ東海岸で最も大きい学会の1つであるYankee Dental Congressで2009, 2010年の2回発表機会を得ることができました。1時間の講演というのは当時あまり経験がなく大変貴重な経験となりました。
最優秀ポスター賞の表彰式、記念品授与の様子
2010年にはタフツ大学、ハーバード大学、ボストン大学の合同発表会が行われ臨床ポスターセッションで最優秀賞を授与することができました。アメリカはその多様性が故に社会的問題点ばかりが指摘されますが、実力を示せば人種の壁を超えて評価してもらえるという自由は確かに存在しますし、向上しようという人たちにとっては無限の可能性がある国だと思います。
2012年アメリカ歯周病学会での講演の様子。初の80分単独講演。
2013年タフツ大学同窓講演会での講演風景
2010年PRDミーティングの発表にて
2010年タフツ大学補綴同窓会のポスター発表
タフツ大学歯周病学専門医プログラムの卒業証書授与式で。現AAP PresidentのDr.Terrence Griffinと一緒に。
アメリカの卒業式でおなじみのHat Toss
デンバーにある歯周病専門クリニック Altura Periodonticsでの講義
国内での講演は年間20回前後行なっています。
現在でもタフツ大学臨床助教授として年に1、2回教鞭をとっています。次世代の歯周病専門医の卵たちに少しでも貢献できればと思っています。
タフツ大学講義後。歯周病専門医レジデント、ファカルティー達と一緒に。
私がタフツ大学で享受した教育で痛感したのが、教育内容が非常にロジックで、教育の質が担保されていることでした。また知識と技術のトレーニングのバランスが素晴らしく、また効率的であるために、3年間のトレーニングで一般開業医の15年程度の外科的経験が積むことができると言われています。
デンタルスクウェアジャパンでは私がアメリカで実感したような質の高いプログラムを、各分野の専門医から皆様にご提供いたします。