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【DSJ/デンタルスクウェアジャパン】アメリカにおける健康保険と歯科医療事情

皆さまこんにちは。DSJアドバイザリーボードメンバーの嘉村康彦です。今日はアメリカの保険制度を中心にお話したいと思います。アメリカと日本では公的健康保険制度が大きく異なります。日本では国民皆保険制度、アメリカでは受給資格がある人のみ公的医療保険制度に加入できます。主な公的医療保険制度として、メディケア(Medicare)とメディケイド(Medicaid)があり、メディケアは、65歳以上の高齢者、身体障害を持つ人、および透析や移植を必要とする重度の腎臓障害を持つ人を対象とした政府が運営する保険制度で、メディケイドは、低所得者を対象に、州と政府によって運営されています。 これらの制度の対象外となる人は民間保険への加入を検討する必要があります。公的保険は基本保険料は無料であり、診療もほぼ無料で受けることができるのに対して、民間保険の保険料もちろん有料であり、プランにもよりますが多くの場合、手出し(Out of Pocket) の治療費がかかります。

 

メディケイドは日本で言う生活保護制度であり、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。もちろん万全な保険というわけではなく、根管治療はメディケイドでカバーされないことが多いです。(州によって異なる)そのため齲蝕が歯髄まで及ぶ症例で、患者が治療費を捻出できない場合、残念ながら抜歯が第一選択となってしまうことがあります。65歳以上のアメリカ国民1/4が無歯顎である背景には、メディケイドによる早期抜歯が関与していると考えられています。また、専門医クリニックでは公的保険を受けつけていない施設がほとんどであり、限られた施設で治療をうけるのに長時間待つ必要があります。Bisgaierら(2011)によると、小児歯科医がメディケイドの患者よりも、民間保険に加入している小児患者を優先的に診療していたと報告しており、実際にメディケイドを保有していた12歳の少年がう蝕原性の脳感染により亡くなったという報告もあります。

 

保険制度に関して言うと、日本とアメリカでは文化や制度の歴史などが全く異なるため、比較はできませんし、するべきものではないのかもしれません。このような歯科事情の中で、アメリカにおける歯科医師や専門医を生み出す教育制度は優れたものがあると感じています。我々、専門医は卒後翌日から専門医クリニックで専門医として独り立ちするべくトレーニングを受けてきました。その教育はそこで終わるものではなく、コンセプトや臨床哲学という「核」を学ぶことにより、卒後も継続した情報収集、学習ができるような 教育であったと感じています。DSJのエンドコースでも「病因論や生物学的考察を基礎とした歯内療法学のコンセプトを理解し、新たな潮流を自己で解読する論理的思考力を養う。」ということを1つのミッションに掲げ、コースを編成しています。

 

DSJアドバイザリーボードメンバー
嘉村 康彦