治療計画、補綴修復、歯周病(インプラント)、歯内療法のスタディグループはデンタルスクウェアジャパン(DSJ)へ

ニュース&トピック

【DSJ/デンタルスクウェアジャパン】保険制度主導の歯科医療の価値を再考する

昭和36年に導入された国民皆保険は「国民誰もが医療の恩恵を受けることができる」ことを前提として導入されました。この皆保険はセーフティネットとして多くの人にとって「安近短」な手頃な医療サービスとして確立し大きな病気の治療には有効な場合もありますが、近代歯科においては最善の歯科医療を受けられる制度とは決して言えません。「治療費は安いしそれなりに歯がもてばそれが最善」と思われる方もいらっしゃいますが、ここでは患者の口腔健康を生涯維持するための歯科医療を「最善」と捉えていただけると幸いです。

 

一般的に、医療制度は医療文化に影響を及ぼすだけでなく、国民の思考文化を定義すると言われており、歯科医師や歯科衛生士もその影響の例外ではありません。そもそも歯科医師が治療を受けたいと思った時、この保険制度の中で治療して欲しいと思う人は皆無であると言っていいと思います。結果として、健康保険診療のみを土台とした診療を行なっていると、最後は歯を失っていく構図が出来上がっていて、事実、その結果は歯科疾患実態調査に現れています。

 

理想的には、私たち多くの日本の歯科医師が「質の高い歯科医療」を形成し、維持していくための健全な資本主義が機能しているということが大前提になります。残念ながら現実はそうではなく、戦後間もない50年以上前に導入された疾病に対する給付を前提した制限保険制度内で、治療の繰り返しにより口腔環境破壊を引き起こし、実は誰にとっても真の利益にならない歯科医療制度に疑念を抱き、自分の実践している制度主導の歯科医療に違和感を持ちつつも、日常は変えることができない精神的葛藤に自覚しつつストレスを抱えて生活手段の1つとして歯科治療を行なっている歯科医師も決して多くないと思います。制度主導に影響を受けた患者さんの希望や考え方を鵜呑みにして、「患者主導の歯科医療」というのは的外れであると思います。

 

そういう中でも、日本の歯科医療制度上もっとも評価できる点は「自由診療」が医科よりもハードルが低く許されている点だと思います。歯科医院のほとんどは個人経営であるため、比較的自由な裁量権を持って、自院の価値を決めることが可能になり、歯科医院の中では統制社会に影響を受ける必要は全くないと思います。これはアメリカでも日本でも同じことだと言えます。

今の日本社会におけるあらゆる消耗品は品質の耐久性も飛躍的に向上し、本来であればモノを大切にする文化が醸成されるはずですが、さらに新しいモノを求める「買い替え社会」が一定周期で行われることにより、モノが溢れ「飽和社会」に陥っています。歯科医療における「買い替え社会」は口腔崩壊に繋がるために、「歯」という生涯をかけて利用する消耗品を、一生を通じて耐久させるための取り組みに考え方をシフトする必要があります。その目的を達成するために制限医療制度外の良質な「自由診療」と、リスク評価に基づいた予防メインテナンンスの実践が歯科医院の哲学には不可欠です。そして、良質な歯科医療は「適切な人」が「適切な判断」で「適切なタイミング」に「適切な手段を選択」を行い実践するものだと考えています。そのような歯科医療が正当な価値として感じられるような取り組みをこれからも続けていきたいと思います。

 

話は長くなりましたが、「価値」という言葉は単純に解釈するには短い言葉だなぁーと思いますが、オーラルケアの大竹喜一社長がズバリと本質を射抜いたコメントをされていらっしゃいましたので、最後に引用させていただきます。「日本人は“デンタルIQ”が低い」と言う人が歯科界にはいますが、歯科界こそがデンタルIQの意味と定義をわかっていないのではないでしょうか。デンタルIQとは、歯に対する知識を豊富に持っていることではありません。もしそうであれば、歯科大学の教授や歯科医師には歯周病も口臭もないはずです。他のあまたある健康への意識を上回り、歯の健康のために時間、エネルギー、そしてお金を価値ある行為として喜んで使うこと。それを「デンタルIQが高い」と言うのです。

 

皆さんはいかがでしょうか?