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【DSJ/デンタルスクウェアジャパン】歯髄再生療法の今 〜DSJ設立記念講演会を終えて〜

この度、DSJ設立記念講演会の講師の一人としてコロンビア大学歯学部歯内療法科のDr. Sahng G. Kimを日本にご招待することができました。講演会にご参加いただいた皆さま、ご協力いただいた皆さまには心より感謝申し上げます。

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Dr. Kimの講演では、歯髄再生療法(Regenerative Endodontics)について、今までの研究の歴史を振り返りながら現時点でどのような臨床アプローチが望ましいのかをお話しいただきました。3時間半の講演の中で紹介された論文は多岐に渡り、古くは1961年の生物学的考察に関する論文から直近の再生医療に関わる基礎研究・臨床研究・システマティックレビューの論文にまで及んでいました。ややもすると学術的になりすぎて日常臨床とかけ離れてしまう トピックを、歯科医療従事者に夢や希望を感じさせてくれる内容に仕上げてくれた点に、彼の臨床と研究に対する優れたバランス感覚を感じ取った参加者は非常に多かったと思います。

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さて、この歯髄再生療法は元々日本から発信された論文(Iwaya et al. Dent Traumatol. 2001)がきっかけで根未完成歯の治療法の新たなアプローチとして注目が集まりました。従来であればアペキシフィケーションが行われていた症例でも、歯乳頭の幹細胞により歯根の成長が期待できることが臨床的に示されたのです。岩谷先生によれば実際の症例では根管内に歯髄様軟組織の増殖が観察されたとのことでしたので、アペキソゲネーシスに類似した生体治癒だったと思われます。しかしこれがきっかけで「幹細胞や健全な組織にダメージを極力与えずに感染を除去するには」、「成長因子をどのように活用できるか」、「どのような材料が細胞の足場として適しているのか」といった基礎研究、前臨床研究が活発に行われるようになりました。現時点での最新の知見に基づいた治療プロトコールは、アメリカ歯内療法学会(AAE)のサイトで提示されています。

 

https://www.aae.org/specialty/clinical-resources/regenerative-endodontics/

 

後日談ですが、DSJ設立記念講演会の後Dr. Kimを仙台にお連れし、先ほどの論文の筆頭著者である岩谷先生はじめ多くの先生方とお引き合わせすることができました。気仙沼の被災地、東北大学での特別講演、懇親会、東京に移動してからの観光、と限られた日程にまさに盛り沢山でした。私はDr. Kimの日本滞在中の全行程をご一緒しましたが、彼の食に対するバランス感覚も大変際立っていたことを皆様にお伝えしておきたいと思います。おでん、梅ヶ枝餅、元祖長浜屋、たこ焼き、天神に新たにオープンしたばかりでDr. Paniz、Dr. Gobbatoも納得したイタリアンレストラン、いちご大福、気仙沼の海鮮アナゴ丼、G7仙台夕食会で使われたフレンチレストラン、仙台駅での牛タン弁当、上野のガード下でのもつ焼き、たい焼き。彼のリクエストもあり、日本の食文化の質の高さとディープさの両方を堪能していただきました。Dr. Kimには「今度は家族を連れてぜひまた日本に来たい」と言っていただきましたので、今後新たな企画ができればとも思います。

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最後に、改めてDSJ設立記念講演会にご参加、ご協力いただいた皆さまにお礼申し上げます。誠にありがとうございました。今回の講演会の余韻をそのままに、今年度から始まる各コースなど今後の我々の取り組みにぜひご期待いただければと思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 

DSJボードメンバー 田中利典