治療計画、補綴修復、歯周病(インプラント)、歯内療法のスタディグループはデンタルスクウェアジャパン(DSJ)へ

症例紹介

症例紹介

インプラントファンダメンタルコース

DSJボードメンバーで、米国歯周病学会認定専門医、ヨーロッパインプラント学会認定専門医の築山鉄平です。今回は現代インプラント治療の本当の意味についてお話しさせて頂きます。

1990年代から2000年代、インプラントが今以上に隆盛を誇っていた時代がありました。この時代のインプラントの捉えられ方としては、天然歯に取って代わる素晴らしい人工歯だという認識でしたが、実際は天然歯とインプラントは組織学的に見ると似て非なるものだということが、新しい科学的データにより明確になってきました。そして現在、インプラントがなかった時代には存在しなかったインプラント周囲炎 (Peri-implantitis)という問題が社会に広がり始めています。この疾患が厄介なのが、治療法がまだまだ確立されていないということです。

話は変わりますが、1992年ブラジル、リオ・デ・ジャネイロでの「環境と開発に関する国連会議(環境サミット)」において、12歳の少女が大人を“はっ”とさせられるようなスピーチをしたことを思い出します。「自然を破壊してオゾンに穴が空き、多くの動物が絶滅している。元に戻す方法が分からないのになぜ破壊し続けるのですか?」と。

インプラント治療もこのメッセージに通じるものがあると思います。インプラントも、インプラント周囲炎になってしまうとその後の対応が非常に大変で、まだ絶対的な解決方法が示されている訳ではありません。だからこそ、そのような状況に陥らないような原理原則、そしてきちんとした科学的データをもとにリスクアセスメント、診査診断、治療計画、治療の実行を行わなければなりません。

更に原点に立ち返ると、そもそもインプラント治療を検討するということは、歯を失うという事態にたどり着いている訳であり、そうなる前に「Repeat Restoration Cycle(治療の繰り返しサイクル)」を止めることができなかったのでしょうか?インプラントファンダメンタルコースでは、欠損補綴の1オプションとしてのインプラント治療の理解・実践に留まらず、本当に患者さんの口腔健康を守るために必要な哲学とソリューションも皆さまと一緒に共有できたらと考えています。

こちらの患者さまは31歳女性で、右上5小臼歯部位の疼痛を主訴にお越しになりました。患者さまは過去に多くの修復治療のみならず、矯正治療、この若さでインプラント治療を経験されていました。そしてこのインプラントは感染に侵されており、患者さまの残りの人生において機能を全うできるかどうか分かりません。インプラント治療を行うにしても患者さまの適切な人生のタイミング、適切な治療介入が必要です。インプラント治療というものを切り口に、関わる患者さまの口腔健康の根っこの部分も考えるきっかけになればと思います。

DSJ主宰・ボードメンバー 築山鉄平

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